石井 誠治 さん

東京都生まれ。樹木医(日本樹木医会技術委員)、日本森林インストラクター協会理事、森林インストラクター東京会(FIT)元会長、環境カウンセラー。青少年の野外活動を支援する公益法人の事務局長、園芸会社勤務を経て独立。

樹木診断調査、園芸相談、環境教育活動などでも活躍中です


樹木ハカセになろう

(岩波ジュニア新書)

出版社:(株)岩波書店

発行日:2011年3月19日

版型 :新書版

ページ数:224ページ

はじめに 桜並木の1年(桜並木はたいへんだ/小学生の落葉掃除/8月に落葉/ケムシの発生/芽は半年前から)

 日本の春は桜で始まる。いつからそのようなことになったのだろう。ソメイヨシノが認知される明治30年ころからだろうか。私が小学校に入学する時には、校庭にソメイヨシノは咲いていた。いまは、近所の桜並木のソメイヨシノが春を告げる。春は足早。桜並木はいつも気がつくと葉ざくら。華やかに存在を見せつけていても、一週間で見向きもされなくなってしまう。しばらく意識されない存在になる桜並木に、地元の小学生の声が響く。そろそろ落ち葉の季節だ。

毎年体験学習の一環で、地元の人たちと落ち葉掃除が始まる。竹箒とちり取りをもった小学生が、隊列を組んで桜並木に現れる。頼もしいような、どこか懐かしい、それでいて頼りない隊列だ。班に分かれてブロックごとに落ち葉を掃き集める。10月になると、毎日結構枝から葉が舞い落ちる。週に一回では追いつかない。70リットルのゴミ袋何十袋も積み上がる。桜並木沿いに住んで居る人たちはたいへんだ。

 ソメイヨシノは1年をどのように感じているだろうか。

人間社会は新年が年の初め。大晦日が1年の締めくくりとすれば、樹木の年の瀬

は夏の終わりころだろう。今年の仕事をやり終えるころ。疲れてきた葉の脇には

来年の春咲く花芽や葉を包み込んだ鱗芽ができあがっている。

いつ台風が来ても、寒さが来ても大丈夫と言いたげに葉は風を受けてそよいでいる。桜はすでに来年の準備を半年前には済ませている。人間も見習わなくてはいけないかもしれない。葉はすでにあまり働いてはいない。8月からは隠居の身だと思えばよい。だから8月から落ち葉は落ち始めている。今年伸びた芽に付いた

新葉は、枝の伸びに従って順番に下から成葉になる。早く成葉になった葉から、

だいたい順に落ち葉となって旅立つ。落葉が始まるころ葉に卵を産み付けに来る蛾がいる。モンクロシャチホコガ。

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2012年9月17日 朝日新聞 天声人語
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目次:

1 身近な樹木に興味をもとう

・木のイメージを書いてみよう

・知ってる木はいくつある?

・葉っぱは樹木に親しむきっぷ

・表と裏は別世界

・匂いは虫とのコミュニケーション

・手のひらで木を見分けよう

 

2 木はいろんなサインを出している

・樹木語はやさしい

  樹木はシンプル/サインはV/葉が口ほどに物を言う/見えないところが肝心

・芯の強い木は大木になる

  日陰者の強さ/年輪は物語る/ギャップがつくる森の更新/森の王者の条件

・葉で考える樹木たち

  1年の経過を見ている/人間もかなわない能力/形のいろいろ/落葉する意味

・巨樹、古木はノミの心臓

  木の心臓/100mも水が上がる/幹で聞こえる音は?/よくできた水の循環

・根は胃や腸のはたらき

  根のはたす役割/冷暖房つきの環境/体を支える/根が木の寿命を決める

・大木の足は細い

  根は眠らない/大地をつかむ/足は歩くためだけにあらず/根とからむ菌根のネットワーク

 

3 気になる各地の木

・日比谷公園のイチョウ

  日本初の西洋公園/大きなイチョウが泣いている/首を賭けた偉大な植物学者/松本楼のシンボル/イチョウは生きた化石だった/中国から来た公孫樹

・銀座のヤナギ

  埋め立て地にあう樹木/そしてヤナギが残った/シダレヤナギが江戸に多いわけ/中国のヤナギとポプラ

・スギはすごい!

  スギは日本特産種/ジャイアントセコイアは1350トン/メタセコイアはよみがえった/ギネスに載るノッポの木/縄文杉は切り残された/桶と樽の世界観

・日本一大きな木はクスノキ

  環境省がはじめた調査/幹の周囲は偉大なり/南から来た木だから/役に立つ木はすぐになくなる/成長がいい木はご神木に向く/青い目のセルロイド人形はクスノキ

 

4 グリーン・アドベンチャーと子供樹木博士

・新宿御苑のグリーン・アドベンチャー

・樹木の観察常設コース

・子供樹木博士のイベント

・近くの公園でやってみよう

 

5 虐げられる木たち

・都会の巨樹たち

  根の伸びるスペースがほしい/地下水の流れが途切れる/ビル風に揺られる/伸びたら切られる/図面の上で動かされる/傷だらけの人生

・悪者になったスギ

  人の体質が変化する/植え過ぎは時代の要請/風任せ、アレルギー/複合しないと発症しない?/なんといっても花粉症

・アカシアはなぜ切られるのか

  身勝手すぎるよ国交省/ニセアカシアは許しておくれ/蜂蜜くらいおおめに見てよ/樹木は特定外来から外せ

・電柱になったケヤキ

  江戸期に完成した武蔵野の風景/関東ロームに合うケヤキ/箒状の樹形は人為的/邪魔になっても枝は残せ/電柱にするなら切り倒そう

 

6 樹木博士の条件

・木が1000年生きる秘訣

  森の中でゆっくり育つ/尾根よりも麓の近く/谷よりも中腹の傾斜がゆるい場所/最後は人間の意志

・この木は何歳?

  幹と枝葉の関係/ドーナツのような分布/いつも若返る樹木の樹齢/生きつづけるために小さくなる

・どこが違うの、針葉樹と広葉樹

  裸子と被子/葉の広いイチョウは広葉樹?/針葉樹の主役はコニファー

・草が先、木が先

  100人に聞きました/木に竹は接げるか/草は種で勝負する/木の限界、草の未来

・三つ子、五つ子? 園芸植物

  あざやかな花を咲かせる草花/接ぎ木でなければソメイヨシノではない/ベニバナトチノキの並木道/品種改良は都会と生活を豊かにする

 

 



木を知る・木に学ぶ

(ヤマケイ新書)

出版社:山と渓谷社

発行日:2015年7月3日

版型 :新書版

ページ数:298ページ

内容紹介

「なぜ日本の桜は美しいのか」、「歴史になった樹木。高田松原の一本松」、「日本人なら漆を知ろう」など身近な樹木の素顔と人の営みと歴史文化について、樹木医・森林インストラクターでお馴染みの石井誠治さんが分かりやすく語ります

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読売新聞の書評
2015年10月4日(木) に掲載された前田英樹(評論家・立教大学教授)による書評です  ダウンロードしてお読みください
読売t.pdf
PDFファイル 2.3 MB


目次

 

・はじめに

第一章 木を学ぶ

1.葉と芽と花

 ・木を見ていた先人たち

・樹木各部の名称や働き

 ・一年以上枝に葉が付く効果

 ・芽が持つ意味

 ・花が語りかけてくること

 ・種子いろいろ

2.根と菌根

 ・根の役割

 ・木は土が嫌いか

 ・木とキノコの関係

 ・菌根菌とは

 ・日本の森で起こった菌根菌の変化

3.環境を味方にする知恵

 ・オニシバリの生き方

 ・寒さや乾燥、積雪に耐える

・実の形の違い

 ・発生起源の古い樹木イチョウ、ソテツ、奇想天外

 ・木と草の境界線

4.木が持つ身を守る方法

 ・森の中のできごと

 ・低木の生き方

 ・折れた木が再生する方法

 ・木に寿命はあるか

 ・細い毛が新葉を守る

 ・草餅の香り

 

第二章 木と人間

(サクラ)

・なぜ日本の桜は美しいのか

 ・野生の桜

 ・園芸品種のソメイヨシノ

 ・参勤交代がもたらした機会

2.秋から咲く桜の不思議

 ・ヒマラヤザクラのルーツ

 ・カンヒザクラとの関係

 ・秋咲きでも実りは初夏

3.世界中で咲く日本の桜

 ・プラントハンターの役割

 ・ワシントンの桜

4.桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿

・サクラを切るのはほんとにバカ?

・ウメを切るのはバカ?真面目?

・桜の品種を考えよう

(ツツジ)

1.ツツジの種類

・ツツジの仲間たち

・ツツジとサツキはどこが違う

・山に咲くツツジ

・クルメツヅジ

・ヒラドツヅジ

・江戸のツツジブーム

・庶民の園芸嗜好

・江戸で発展。六義園と百人町

・能登に残ったキリシマツツジ

 

第三章 木の歴史

(イチョウ)

1.樹木にもあった精子

 ・イチョウとソテツから精子発見

 ・精子はメス株から

 ・葉に残る過去の記憶

 ・イチョウと人との共通点

 ・いつ日本に渡ったか

2.倒れても記憶に残る鶴岡八幡神社の大イチョウ

 ・倒れる前から傾いていた

 ・イチョウの雌雄

(ブナ)

1.函南原生林の大ブナ

 ・6月19日の出来事

 ・アガリコブナ

 ・日本のブナ

 ・ムカシブナ

2.世界のブナの現状

 ・ブナの分布

 ・ブローニュの森のブナ

・ブナは木簡

(マツ)

1.東京に残る巨大盆栽

・善養寺の影向の松

 ・盆栽に松が使われる理由

2.白砂青松、海岸の松

・天橋立には淡水の泉がある

 ・白砂青松は平安時代から

・マツが果たした減災

3.苦しめられる日本の松

 ・長崎からの警鐘

 ・材線虫という1ミリに満たない原因

 ・エボラ出血熱のような致死率 

 

 

 

 

第四章 木と信仰

(クリ)

1.ブナ科クリ属の世界

 ・常緑の森が与える影響

 ・ナラ属とクリ属

 ・クリの特徴

2.世界のクリ

 ・チュウゴクグリ

 ・ヨーロッパグリ

 ・アメノカグリ

 ・ヤマグリ

 ・縄文人も命の糧としていた

3.天狗になった樹木。小野のアバレグリ

 ・シダリグリの仕組み

 ・アバリグリとは

 ・世界の宝「アバレシダレグリ」

(クスノキ)

1.神社のご神木

・クスノキの居場所

・伊勢神宮のクスノキ

・クスノキの分布

2.仏像としての利用

・飛鳥時代の仏像

3.生活との結びつき

・クスノキの使い道

・樟脳の取り方

・強心剤としてのカンフル

・セルロイドの浮き沈み

・タブノキ線香

 

第五章 木と生活

(スギ)

1.登呂遺跡に眠るスギ

・杉の木との付き合い

・木材の特性

2.並木と参道

・日光杉並木

・東海道の杉並木

・伊勢神宮と参道の古木

3.世界の仲間とスギの使われ方

・世界の仲間は巨木軍団

・縄文杉は残った

・スギの使われ方

・スギの線香

(ヒノキ)

1.ヒノキ風呂を考える

・香りの持つ意味

・総ヒノキ作り

・ヒノキとアスナロの関係

2.木の長い話

・明治神宮の鳥居

・法隆寺にみる古代の木材

・五重塔とは

・木を知るには土を知れ

(漆)

1.縄文時代の生活

・ウルシを食べる

・9000年前の漆製品

・交易ルートと自生地

・杭の傷は何だ?

2.漆の実力

・ウルシ樹液の採取方法

・良質な漆

3.生活の中のウルシ

・お椀と茶碗

・漆木椀をもっと使おう

(クワ)

1.桑と養蚕

・東京都心に桑畑や茶畑

・桑と蚕と絹糸

・生糸が紡ぐ日本経済

2.クワとその仲間

・クワ、コウゾ、カジノキ

・桑の実

(カキ)

1.甘柿は日本生まれの果物

・日本でてきた甘柿

・新たな競争相手

・完全甘柿と不完全甘柿

・渋柿の大表品種

2.柿渋の用途

・食用よりも大切だった用途

・樹木としての特徴

 

あとがき




都会の木の花図鑑

(新装版)

出版社:八坂書房

発行日:2016年2月25日 (新装版)

版型 :四六版

ページ数:264ページ

内容紹介

 公園や街路樹、生垣や庭先で見かける身近な樹木を取り上げ、花や葉、樹皮など様々な写真で紹介。 名前の由来やおもしろい性質、ちょっと便利な利用法や手入れ法など知って得する情報が満載です




樹木の名前

出版社:山と渓谷社

発行日:2018年2月19日

版型:A5変形版

ページ数:592ページ

内容紹介

樹木の名前の由来がよくわかる!

樹木の名前を覚えたり観察に役立つことはもちろん、街歩きや野山散策もいっそう楽しくなる図鑑です。

街中から野山で見かける約700種の樹木の和名の由来と見分け方を解説。植物の和名には、現在は馴染みのうすい昔の生活用品、生活文化、身近な動植物などが関係しています。

本書では、どうして植物にこの名前がつけられたかを写真やイラストを交えて分かりやすく紹介。

さらに、野山で間違えやすい種類との見分け方も解説。

名前の由来が分かると、その植物により親しみが湧き、植物観察の楽しみ方も広がり、深まります。

著者略歴 (BOOK著者紹介情報」より)

高橋/勝雄(図鑑執筆途中で死去)
1938
年生まれ。1988年から1999年までNHKテレビ「趣味の園芸」に山野草などのテーマの講師として出演。1991年から410か月間、毎日新聞で連載のユーモア・エッセイ『野の花に親しむ』を担当。2011年、73歳で逝去
長野/伸江(途中から引き継ぐ)
新潟県生まれ。早稲田大学法学部卒業後、放送局(NHK)での音楽番組制作を経て、フリーランスのライター・編集に。小学館『日本国語大辞典』改訂に関わり、古典文学に出合う。日本の伝統文化、生活文化に関わる人々へのインタビューを中心に多方面で活動
茂木/(図鑑の写真)
1949
年、宮城県生まれ。冨成忠夫氏に写真と油絵を師事
松見/勝弥(図鑑のイラスト)
1942
年、熊本県生まれ。広告会社退職後、イラストレーターとして活躍。高橋勝雄氏の著書14冊余のイラストを担当。名古屋市東山植物園の講師として植物知識を提供
石井/誠治(図鑑の監修)
1951
年、東京都生まれ。樹木医、森林インストラクター、環境カウンセラー、日本山岳会会員。野外での自然解説や文化講座の人気講師。樹木と生活文化の研究者(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)